失敗から学ばない (日本人と「日本病」について その1) - 流水成道blog

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失敗から学ばない (日本人と「日本病」について その1)

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太平洋戦争に日本軍がなぜ神経症的、精神病的と言える異常反応を起こしたのかについて、岸田秀と山本七平の対談を書いた本が、『日本人と「日本病」について』です。

 

何が異常かと言えば、アメリカ軍は失敗をしたら前の失敗を徹底的に研究して万全の策を講じ、同じような失敗を2度繰り返すことがないが、日本軍は失敗に懲りず、失敗から教訓を引き出さず、同じ失敗をまた繰り返す。

ハワイ奇襲、第一次ソロモン海戦のような勝利は1回限りで同じやり方で2度勝つことはほとんどない。補給の失敗でガタルカナルで惨敗し、ガタルカナルと前後して開始されたスタンレー山脈越えのポート・モレスビー攻略作戦でも補給の失敗で自滅し、インパール作戦でも同じ失敗をする。アメリカ軍としては、同じやり方で何度でも日本軍を叩きのめすことができた。むしろ日本軍が同じやり方で勝手に自滅した。

ネズミは規則性が発見できない迷路に置かれるとどうしていいかわからず不安になり、しかし腹が減ってくるから何らかの行動を起こさざるを得なので、根拠はないが右側なら右側に曲がるという方針を決定し、いったん決定すると何度失敗しても断固として方針を変えない。ネズミと日本軍がダブって見える。

精神分析で手段が目的化し、本来の目的より優位に立つのをフェティシズムというが、日本軍はフェティシズムに陥っていたとも思われる。もっとも無意味で悲惨な結果を招いたのは、日本軍の勇気フェティシズムで、勇気というのは本来戦果を挙げるための手段なのだが、それが目的化していた。

どうして日本軍がこうした異常行動を起こしたか、バンザイ突撃や特攻隊はもし症状だとすればどういう症状なのか、これらを生じさせた日本軍の構造的欠陥は何かなどの問題を考えてゆけば、近代日本国家というものを考えざるを得なくなる。日本軍は日本国家のもっとも代表的な集団であり、その構造的欠陥は日本国家の構造的欠陥を反映しているからである。神経症患者の場合も、個々の症状をそれだけ切り離して問題にし、除去しようとしてもだめで、患者の全人格構造を問題にしなければならない。日本軍は壊滅したけれども、日本軍という「おかしな」集団を生み出した日本国家の構造的欠陥はそのままである。

 

原発事故のような重大事故を起こしても、失敗を認めず、再稼働を進めることを見てもわかるように、現在でも日本の組織の体質は変わっておらず、同じ失敗を繰り返し、また国を滅ぼしそうになっているのだと思います。

1980年刊行なので本書は35年前の考察です。今年が戦後70年なので、現在から見れば戦後の折り返し地点で書かれた本ですね。戦後35年の日本は追い詰められていないから問題が露呈しなかったですが、戦後70年になって追い詰められていよいよ問題が噴出してきた。

このままだと日本人は変わらないので、近い将来、5年から10年後くらいに2度目の敗戦を迎える。日本人の所得は減り、人口も減っているというのは、戦争で国土を破壊されているのや殺されているのと実質は同じです。現代の戦争は、経済戦争や情報戦争になったため、日本人は戦争をしている自覚がないというだけです。

論語に「過ちて改めざる、是を過ちという」(間違えることより、間違いを正しく改めないことの方が重大な間違いである)という言葉があります。伝統的に日本人は、間違いを繰り返さないことの大事さを知っていたのに、戦前・戦後とそれを実践できなかった。徳川家康は、三方ヶ原の敗戦の情けない姿を絵に描かせて、毎日それを見て、次はどうすれば勝てるか考え、天下を統一した。

5年から10年後、次の敗戦のショックの時に、失敗を繰り返さない日本人に変える2回目のチャンスが来ます。そこで変わらなければ、また70年から80年後にまた負けるでしょう。このチャンスをモノにするには、歴史を研究して、教訓を引き出すのが、一番確実な方法だと思います。

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このページは、松浦彰夫が2015年10月 3日 12:36に書いたブログ記事です。

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